24. 貧困からなぜ売り専に落ちるのか
仕事を選ばなければ生活できる。保険だって使えて3割負担、家賃も探そうと思えば格安のアパートだってある。だけど働いても働いてもお金がたまらない。
別に子どもがいるわけでも、奨学金の返済に追われている訳でもないんですけどね。
大学を出て就職したのはいいんだけど、どうもしっくりこないというか。理想の職場とは到底言えないし、嫌味な同僚や意地悪な上司に囲まれて最低最悪な毎日。
俺、こんな気持ちで仕事なんかできない!
そんなこんなで退職してからお金に困って売り専業界に飛び込んだ俺ですが。周りの売り専ボーイを見てみても、どいつもこいつもお金に困ったその日暮らしの奴らばかりです。生活に困窮したシングルマザーや、借金で首が回らない主婦が格安風俗店で体一本を使って働くように、貧困と風俗は切っても切れない関係。
今やその辺の学生でもスマホで援交相手を探す時代なので。宗教観も倫理感も薄い日本人に生まれたんじゃ、体を売ることにも抵抗はなくなる。きっとそんなもんなんだろうね。ナンダカンダ売り専業界に足を突っ込んで2年になるけれど、欝寸前まで追い込まれた前職に比べると、割り切っているのもあるかもしれないがやっぱり気持ちいいことしてお金貰えるって楽にみえてリスクやいろいろなんだかんだ大変だけど普通に暮らせてはいます。
特別男が滅茶苦茶好きな訳でも、自身のセクシャリティーをゲイだとは思ったことないけれど。お金が無くなると生活は苦しくなる、だけど性欲はなくなりません。
なんだろ嫌な仕事を辞めた反動かもしれないですけど、売り専を始めた当初から困惑や恐怖よりも俺の場合は好奇心と向上心があります。
売り専を始めるまでは男とやったことなんてなかったけれど、何故か興味はあったんです。男に抱かれたらどんな気分なんだろう、きっと男の気持ちいいツボ抑えたセックスできるんだろうなとか、色々妄想してました。自己都合で辞めた前職だから失業手当は出ないし、貯金もないし……結局女性が貧困から抜け出すために風俗で働くのと同じように、俺も風俗で一時凌ぎするかあ。となんとなしに思ったのがまず俺の売り専スタート地点。
色んな店舗の店があるけれど、箱型の店は他の売り専ボーイとの付き合いがめんどくさいから出張ホストにしたんだ。まあ出張ホストといっても、歌舞伎町にいるようなイケメンホストみたいな売り専は皆無ですけどね。男の俺からしてもイケメンだなあ!と思うのはごくひと握りだし、殆どの奴らは色々と問題を重ねたワケありのゲイばかり。
夢を追いかけて借金まみれの三十路ゲイ、歯がなかったり、どこか清潔感が無いボーイとかさ。結局全うに生きている、全うに仕事を遂行しているようなボーイはいなかった。みんな貧困という2文字から抜け切れない、自身の可能性を試さない(試せない?)結局場末の風俗店では職業として誇りを持って働くよりもその日暮しのだらしないボーイばかり。
しゃぶって掘られて、ナンダカンダ気持ちよくイッて。おしゃべりに花を咲かせて1時間のワーキングタイム終了。そんなワンパターンの業務を繰り返して、その日の給料は当日払い。セックスに体を委ねると、体はイクことになれるけど、性欲という本能もどこか掻き立てられるんですよ。ただ客に奉仕するだけじゃ嫌だ!どうせなら自分も気持ちよくなってお金をもらいたい!ってね。
そんな無限ループを毎日こなすんです。お茶くみの日も勿論有るけれど、稼いだお金は大抵飲み代に食費、カラオケみたいな娯楽に消えていく。毎日5000円から数万円のお金は下手したら、かなりの額だって稼げる時だってあります。俺みたいにズッポリアナルに肉棒が挿入されるように売り専業界にハマっていても、堅実に貯金をしているボーイは少ないです。
守るべきものがあったり、叶えたい夢があったり。カッコ悪い言い方だけど輝いている売り専ボーイは凄く少ない。だからお金もすぐに浪費、毎日売り専で働いていても、またヤリたくなってハッテン場でヤリまくる奴らもいるよ?何なんだろうね、日本の売り専ボーイのこの切なさって。
人生セックス、お金、セックス。これだけなのかなあって。。。
あとね貧困が売り専と結びつく理由の一つに、精神的疾患も関係していると思います。なんだろ慣れればホント楽な仕事(俺はセックス好きだから余計そう感じるのかも)だけど、病む人は本当に病んじゃう。腕にリストカット後があったり、安定剤をしょっちゅうオーバードーズしていたり。
普通の人生、普通のお仕事。世間からはみ出た闇街道で体一つでお金を稼いでいると、シナリオライターになれるんじゃないかってくらいの人間ドラマをみることができるんです。メロドラマとかそんな甘ったるいものじゃなくて、リアルなドロドロの昼ドラみたいな、ね。
現実は小説よりも奇なり、これは現実なんですね。
セックスって不思議なもので、俺みたいなノンケのバイでも、アナルセックスを知ってしまったら肉棒が恋しくなるんです。毎日汚いモノをしゃぶっていても、アナルが壊れる位にぶっ込まれてアンアン泣いていても。なんだか愛しくなる。俺頭おかしいのかなと思うけど、もしかしたら俺にとって売り専って天職なんじゃないかなとも思うときもあります。
でもね俺だっていつかは売り専から卒業しなきゃいけない時がくる。楽して気持ちよくお金を稼いでも、このままじゃダメなんだって。そんな危機感が自分の背中を後押しする。周りの貧困ゲイボーイ達を見ていると、やっぱりそう思うんです。
快楽という本能の渦。それに巻き込まれたら、一般社会に戻ることは難しい。なんだろ、二丁目も堂山でもそうだけど、ゲイタウンに蔓延る売り専ボーイって経済的にも精神的にも自立できない奴らが本当に多いんです。俺の同僚というか色々世話をしてくれた売り専ボーイがいたんだけれど、ヤミケンがバレてクビになって。最近堂山のビルの片隅で男のチンポしゃぶって2000円札を貰っているのを見て……シワクチャのよれたTシャツにボサボサの髪、クシャクシャの紙幣を握り占めて、安いチェーン店の食事を掻き込んでいる姿を見て、切なくて泣きました。
俺は違う!絶対こんな惨めに路上で体を売るようなことはしないんだ。そんな思いを抱きながら、今日も指定されたホテルで情事に耽るのだ。
俺大丈夫だよね?と我に返ることもあるけど気持ちだけは忘れない無くさない様に生きています。
貧困からなぜ売り専に落ちるのかは以上で、次は男に体を売ってでもデビューしたいへ