13-2. 売り専で怖かった事2
「ゆらり、ゆらり」桜の花の様に今宵も売り専たちが夜空を舞う。
夜桜に浮かんだこの妖しさは、まるで俺ら売り専ボーイの儚くも美しい一瞬を想像させます。
そっと肩に触れた花びらは、暖かくもメランコリックに俺の心を撫でたような気がしました。
過去の静物画にヴェニタスと言う寓意画があります。
ヴェニタスとはラテン語で「虚しさ」を意味し、衰退する美貌と若さ、死する運命の寓意を表しています。
つまり生の儚さ、快楽の空しさを比喩的に表現しているんです。
春をひさぐ商売をしている俺らが感じる、不安や葛藤を上手く表している言葉だなと思いませんか?
小さな桜の花びらが散りゆくその姿は、俺ら売り専ボーイに似ているなあと時々思ったりする今日この頃。
すんません、酒が入るとなんだか感傷的になっちゃうんですよ俺・・・
お酒の力もあって売り専をしていて怖かったことを書いてみようと思います。
えっと、お金を稼ぐって簡単なことじゃいですよね?
そんなのは重々承知なんですけど、時にその感覚を忘れてしまうことがあるんです。
例えばバイトで1万円を稼ぐのって大変じゃないですか?
多分そのへんのファミレスで一日働いても(大体8時間位)、一日1万円なんか夜勤じゃない限り稼げやしないですよね。
でも売り専ってお客さんが1日に2人も付けば、1万円の壁はすぐに超えられるんです。
簡単に言うと、お客さんのチン〇をしゃぶって、イカせちゃえば、その代償としてお金を貰える。
羞恥心なんかすぐに薄れるし、ベッドの上のテクニックも数を重ねれば自然と上達するもんなんです。
でもね俺自身性欲が強いってのもあるし、辛いサラリーマン時代を経験したことがあるからか、時々「こんなんでお金を貰ってしまっていいのだろうか?」と自分自身を見失いそうになることがあります。
自分も気持ちよくイッて、たまにチップを貰って、誕生日にはブランドの時計を買って貰ったり・・・
勿論俺は売り専としてもプロ意識を持って仕事に望んでいるけど、たまにこの感覚の渦に飲み込まれて怖くなっちゃうんです。
そんな夜はいつも堂山のゲイバーで一人酒。
まさに今中島みゆきの「ひとり上手」をつまみに、昔を思い出しながらこの記事を書いてるって訳です。
姐さんの歌は、心の痒いところにいつも沁みるんですよ。笑
よくね、売り専で働けばものすごくお金が稼げる!なんて勘違いして、売り専の門を叩く子がいるんですよ。
きっとメディアでゲイ能人や女装家の皆さんが面白おかしくコメントをしているせいで、ゲイ業界の敷居ってのが低くなってきたってのもあると思うんです。
LGBTの存在が世間に受け入れられて、性的マイノリティーが生きやすい社会になるってのとは別に、アンダーグラウンドなゲイの世界が興味本位で一人歩きしているせいだ。。。そんな気がするんです。
俺は特に滅茶苦茶イケメンでもないけど、人の3倍テクニックも自分磨きも努力してお金を稼いでいる訳。(多分・・・)
簡単に稼げる世界と勘違いされがちな売り専だけど、実際はなかなか怖いことにだって遭遇しちゃうもんなんです。
一番怖かったのは病気でもリピートが取れなかったことでもなくて、お客さんに「生中出し」を強要されたこと・・・
俺が所属する売り専は箱型のお店じゃないから、何かあってもすぐに内勤や他の売り専ボーイに助けを求められないんです。
プロ意識は誰にも負けないつもりだけど、幾らお客さんの要望でも「生中出し」はないよね?
お客さんも数回売り専を利用しただけで、随分と高圧的な要求をしてくることもあるから、流石にそこはきっぱりとルールだからと突っぱねていますけどね。
だけど力ずくでしようとするお客さんも中にはいるし、同僚の売り専も気づかない内にゴムを外されて、ケツ奥に濃いのを出されて泣いてた子もいたし・・・
どこの売り専も同じだろうけど、結局そんなお客さんが来た場合は出禁だけどね。
それ以上に売り専が負う精神的なショックや性病の心配は、計り知れない恐怖があるのは言うまでもありません。
売り専はマリオネットじゃあ無い。だけど時にはこんな酷いお客さんがいるのも事実なんです。
あとこれは直接俺の体験した話しじゃなくて、ゲイバーで知り合った友達の売り専が言っていたんですけど・・・彼は店舗型の店で寮生として店で働いているんだけど、(
の寮は店舗型の場合、閉店後のプレイルームが寝泊りの場になることも多いんです)ある日起きてみると、1日の稼ぎもスマホもブランドの財布もろとも消えていたんだって!
今ではかなり厳格に面接もしていてるけど、以前は身分証明無しでボーイを雇っていた時期もあるんです。だけど経営者の裁量次第では、色々とワケありの売り専を採用することも無きにしもあらずです。(まず抜群にルックスがよければの話しだけど)
何かが起きて泣き寝入りなんてならないように、そのへんの貴重品管理も徹底しないといけません。
ツラツラ書いてきましたけど、短い人生色んな世界を見て、若さを武器に自分と勝負する。
こんな一瞬が人生にあっても、十分有りだと思うんです。勉強することが全てじゃない、敷かれたレールを歩むだけが人生じゃない。
そう強く思う人間が、時に迷い込む世界が売り専なんです。
売り専をしなきゃ経験出来ないこと。
それはきっと飲み屋で酒を片手にじゃないと、語り尽くせないものです。
楽しいこと、自分が強くなれたこと、でもそれ以上に人間の卑しさ、怖さを時に見せ付けられる瞬間があるのも事実。
きっと優しいだけじゃ務まらないと思うけど、それが恐怖や辛さを乗り越えた時が、売り専としてのゴール地点であり卒業の時であるんだと俺は勝手に思ってます、悪しからず!
売り専で怖かった事2は以上で、次は病気と逮捕へ