30. 売り専のパパ(パトロンという名のスポンサー)
お金、セックス、妬み、僻みに嫉み。売り専という性風俗業の世界に蠢くは、人間の欲にまみれたまさに悪の巣窟のように感じる時があります。歴史を遡れば、何千年も続く聖なる売春行為とも言えるけど、現代の売り専にロマンなんかありゃしません。
売り専という形はどんどん進化しているけれど、正直売り専ボーイ一本で食べていける、貯金しながら夢を追ってる。こんな理想的な生き方をしているボーイなんか本当にごくごく一部。サラリーマンにアルバイター、堅実に生きれる色んな職業があっても売り専で働くその理由。それは勿論人それぞれ、病気だったり社会不適合者であったり、はたまた肉棒のように太くアツい人脈を発掘する為だったり……
何も知らない輩から見たら売り専業界は儲かるのかもしれない。水割り作って時給2000円、客と床を共にして5000円。これだけ見たらかなりの高時給かもしれません。でもね、やっぱり売り専業界にもデフレの波が押し寄せているのは否定できない。いくら待ってもお客が来ない、冷やかしばかり、お茶ひきの日々が続きます。そんな店でいくら粘っても、稼げるお金はぶっちゃけそこまで多くない。
ましてや性病に感染するかもしれない、HIVになる可能性だって排除できない、そんな大きな爆弾を抱えて、この金額ですよ?いやはや、もはや安すぎるとも思えてきませんか?特にバック(アナルセックスのことです)OKのボーイにとってはね……まあアナルで感じまくる淫乱ボーイは別にいいけど、ぶっちゃけそこまで多くないんですバックOKのボーイって。
何度も何度も言うけれど、やっぱり以前に比べたら儲からない。これはもうオーナーの口癖にもなっていますが、もはや俺ら個人のボーイ、店がちょっとばかし頑張ったところで何も変わりません。でも売れるボーイっていうのは、どんなに時代が流れても大恐慌の中だって売れるんです。
可愛くて、歯並びがよくて美肌。弾けんばかりの若さ、どんな疲れも吹っ飛ばしてくれるような愛嬌のある笑顔。まあこんな持ち主は売り専業界でもあまりいないし、むしろこんな人間は役者にでもなれる価値のある人間ですよね?俺が以前勤めていた売り専でもいたんですよ、それはもうイケメンのボーイH君が。一概に全てのゲイ層から人気があるとは言えないけれど、清潔感のあるジャニ系ってのが一番わかりやすい言葉かもしれません。到底30手前には見えない童顔は、いくら年齢を偽っても誰も疑いを持たないレベル……
俺らが暇そうにスマホをいじっている時も、彼だけはいつも不在。不在の理由は勿論超常連所謂パトロンのとこに連泊しているから。まあ彼以上のルックスと性格の持ち主をゲイタウンで探せと言われても到底無理、そんなレベルのボーイだからパパが1人、2人いても全然不思議じゃない。でもまあうちら売れないボーイにとっちゃ、あまり面白くないってのが事実だけれども、彼は店一番の古株ボーイだから、決っして口に出して文句をいう人は皆無でした。
パパなんて俺はいたことないけれど、売り専に身を沈めていると、やっぱりその存在はチョコチョコと耳にしてしまうものです。どこどこの会社の社長さんとか、億万長者のお客様、あとは芸能界で活躍しているあの人とかね……店が違っても、やっぱりそんな噂はどこからか聞こえてくるもんなんです。
前述のH君の話しに戻りますけど、確かにお金はそこそこ貰ってるみたい。それこそ一日デートして一緒に過ごして約4万円。その半分が彼の取り分だから、単純計算して×30日で付き60万円。パパっていうよりは束縛がきつくて、口うるさい頑固親父みたいなお客さんみたいで。毎日一緒に過ごしてセックスして、なにかある事に口喧嘩が絶えないみたいな……例えば食事作法で揉めたり、排泄物を食べさせられたり(!)、結局家事手伝い兼性処理係みたいな感じで、H君のストレスも限界だったみたいです。結局変わり者のパパだから、肉体的だけじゃなく精神的にも凄くキツそうでしたね。まあこんなレベルのパパも多いですが、それこそドキュメンタリーとか伝記を執筆できるくらいのすんごい上玉のパトロンを捕まえたボーイだって。
たまにいるでしょう?風俗嬢でもキャバ嬢もしくはホストでも、物凄く貢いで貰って甘いパトロン生活をしている人って。こんな不景気の中でも、ゲイ業界にもまあいるんですよね、そんな人。知っている限りでは、某有名医大の授業料を出して貰ったり、体を売ることしか知らないボーイを父親の如く再教育して某商社にコネ入社させてくれたり……俺もお得意さんから、アフガニスタン(!)の支社に赴任することを条件に、月々数十万のオファーを貰ったこともありますけど。でもやっぱり何かと苦労するだろうし、昨今の世界情勢を考えるとパトロン契約結ばないで結果良かったなと思っています。(これはパトロンというのかな)
でも運良くリッチで優しいパパを見つけた(ママ含め)ボーイの人生は……ただ自堕落に放蕩生活にドップリハマってしまうのが殆ど。自分の夢、例えば店を持たせて貰った、役者としての一歩を踏みだしたなど、人生の階段を一歩一歩着実に登っていくボーイは人握り。
少なくとも俺の知り合いで、パトロンとシュガーな生活を送って幸せを掴んだ人間はいませんでした。勿論彼らにとって、湯水の如くお金を服や食事、お酒にギャンブルに浪費すり毎日……そんな本能というか欲に忠実に生きるスタイルは、彼らなりのささやかな幸せなのかもしれません。例えば宝くじで1万円当たった、パチンコで儲けたぞ!こんなあぶく銭って一瞬でなくなってしまいますよね。それと同じことだと思うんです。
シンデレラストーリーと、白馬に乗ったお金持ちを待ち続けるボーイ達。セックスに明け暮れくれて待ちぼうけする日々。盛夏のセミがミンミンと泣きながら死んでくように、売り専の賞味期限も驚く程短いんです。パパは欲しいが、客すら来ない。そんな活気のない売り専で今日も多くのボーイが、いつ訪れる(かもしれない)パトロン探しのセックスに身を委ねているわけですね。
因みに最近の若者は日本だけに留まらず、世界各国を股にかけオンラインエスコートサービスでパトロン探しをしたりするそうです。男が男のシュガーベビーになる、なんだか妙な感覚に襲われます。でも俺も海外のダンディーなオッサンにだったら、面倒見てもらってもいいかなとか思ったりもしますけどね。笑
売り専のパパ(パトロンという名のスポンサー)は以上です。